- 前もって宿に早朝6時の朝食と昼食の弁当準備を頼んでいた。できるだけ早く椎矢峠から登山を開始するためである。この少々無理な願いを快く引き受けてもらい、大いに助かった。
- 6時前外に出てみると、山に霧がたなびいてはいるが、天気は上々、安堵する。また、前日夕刻、椎葉林道を椎矢峠まで車で走行可ということが明らかになったので、これも安心。7時前に宿を発ち、椎矢峠まで約18kmを1時間で走り、8時前に峠に着いた。5月の時より10分早い。確かに門割林道分岐まで、落石が少なく左程気を使わないで済んだ。門割林道入口のゲートが開いていたが、これは林業作業が行われているためと思われる。一般車の進入が可能かどうか不明。
- この分岐から椎矢峠まで、春の山行の際には走行に緊張した。落石が尋常ではなく、路肩決壊が数個所あったからである。ところが今回は、落石が道脇に寄せられ、決壊した路肩は整備されていた。そのため、5月に比べ遙かに楽に椎矢峠に着いた。しかし、他の4人は、尾前渓谷の素晴らしい景観に感嘆の声を上げながらも、その谷の深さに驚き、息を呑むというような様子であった。何しろ、彼女らにとってこれほど脊梁深く、曲がりくねった林道を18km走り、およそ900mも上るのは初めての体験だったから。
- 登山は、@往路三方山に上ったこと、A度々長めの休憩を取ったこと、B二つの石灰岩ピーク南面トラバースの道確認(所々テープを設置した)、Cトリカブトその他の花観賞などのため時間がかかり、鞍部の先の天主山を目の前に見る尾根西端石灰岩岩頭までとした(ここで昼食・大休憩、40分)。
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- 岩頭から天主山までの往復は我々の足では約1時間半だろうが、そうすると下山を急がなくてはならず(それでも宿に着くのは、前夜宿に渡しておいた「天主山登山計画書」の予定の5時には間に合わず、恐らく6時を遙かに過ぎただろう)、気がせいて楽しくないからである。ゆっくり、じっくり脊梁山中の山道歩きをしたかった。もちろん、他の皆さんもこれに賛成だった。おかげで、予定通り午後5時ジャスト、民宿おまえに戻ることができた。
- 前日と同じくまず私が最初に風呂を使わせてもらった(シャワーを浴びただけ)。4人の入浴が終わるまでビールを飲みながら部屋で過ごした。この日は外で缶ビールを飲む人はいなかった。
- 夕食の献立は前日とは異なっており、宿の女将さんの配慮がうかがわれた。その上、椎葉名産の干し椎茸のお土産までいただいた。ありがとうございました。また、工事の人たちも来られたので、林道走行が楽だったことと事故なく登山を終えたことを伝え、前日の道路情報提供に対してあらためてお礼のことばを述べた。
- ところで、前日は気づかなかったのだが、夕食時ふと見るとあのグレートトラバースの田中陽希さんの色紙があった。彼が今年2月真冬の積雪の中、国見岳を踏破するテレビ映像を見たが、恐らく下山後この宿で休んだのだろう(あるいは宿泊や食事をしたのかも知れないが、女将さんに聞きそびれた)。
- 天主山には登らなかったが、トリカブトと脊梁の森はたっぷり観賞した。何より、きびしい脊梁の山道を歩き、事故なく下山できてよかった。
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- 椎矢峠から旧林道を北東へ10分歩くと、尾根筋を通る三方山登山道が右に分かれる分岐三叉路に着く。旧林道はさらに尾根の左(西側)山腹に延びているが、これは下りに歩くことにする。
- 三方山登山道はなだらかに上る。右手(東側)の谷は尾前渓谷の最上流部であり、深く広い。尾根から谷の斜面一帯に大木が立つ。さらに進むと傾斜がやや増し、道は大きくジグザグを何度か繰り返し小さなピークで左右に分岐する。左は旧林道へ下り、天主山・遠見山方面への道。ここを右直進し、急坂を三方山まで往復する。
- ここに「山頂まで5分 人吉・かめさん」の小さな標識がある。この標識は九州の、特に脊梁の山々の山頂近くでよく見かける。だが、毎度のことながら、我々にとって山頂まで「5分」は難しく、大抵10〜15分かかる。年寄りは要注意!なお、途中、脊梁の山々の眺望が得られるが、三方山山頂は狭く展望はない。
- 小ピークの分岐まで戻り、右折、三方山北登山口三叉路へ快適に下る。ここから左右に谷間の広がる尾根の旧林道を北へ15分歩き、切剥分岐三叉路に着く。右は遠見山方面へ旧林道が延びている。この三叉路で休憩したが、草地の広場で居心地がよかった。また、ここにはアケボノソウが花を咲かせていた。
- 分岐から左の西へ延びる旧林道を下っていく。この道は大小の倒木が多く、大変荒れていて石ころだらけの箇所もあり、歩きにくい。やがて広々した草地になると旧林道終点である。椎矢峠からここまで道は極めて明瞭で迷うことはない。問題はここからである。
- 旧林道終点の先の尾根は急坂で二つのピークがあるが、登山道はそのピークの南面山腹斜面をトラバースする。旧林道終点からトラバースの道を通り再び尾根に出るまでの間、踏分が極めて不鮮明で、道を見失いそうな箇所がいくつもある。古いテープが所々あるものの古すぎて色が褪せ、よく見えない上、その区間が遠く、不安を覚える。
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- 今年の春天主山に登った時、下山中この間2回も道からはずれ、痛い思いをした。そこで今回赤の粘着ビニールテープと金銀両面のテープ(本来は農業用鳥除け用)を用意していた。これを下山中道間違いをしないように、必要な箇所に設置した。そのため、少し時間をくったかも知れない。
- ピークの下、石灰岩の大岩基部辺りからトリカブトの群落が現れる。しかし、立ち枯れが目立ち、何だか胸騒ぎがする。
- 尾根に出ると空が開け明るく、気も晴れる。ここからトリカブトの花園が展開するはずだ。だが、次々と現れる群落は立ち枯れ・全滅の無残なものもあり、驚いた。今年の夏は「これまで経験したことのないような」異常な気象現象が頻発したが、このトリカブトの立ち枯れはそのせいなのか、あるいは病虫害のためなのか。よく分からない。
- おおむね尾根とその北側の緩やかな広い斜面を西に歩いたが、けなげに花を元気に咲かせている群落もあった。また、鬱蒼とした大木の森の景色は圧倒的である。
- 尾根筋を西に進み、その西端石灰岩岩頭に12時20分到着。その先鞍部へ下り、石灰岩やせ尾根を急登すれば天主山山頂だが、下山の時間のことを考え、今回は無理をせず登山はこの岩頭までにした。
- 見晴らしのよいこの岩頭で昼食・大休憩、木陰で40分過ごした。
- 岩頭から引き返したので時間的に余裕が生じ、下山も花を見たり、森を観賞したりしながら尾根出合まで戻った。また、その先の下り石灰岩帯で、上りの道確認の緊張のあまり見過ごしていたピンクや純白のトリカブトを見つけ観賞することができた(これが目的でもあった)。
- その後、旧林道終点、切剥分岐で休憩を取り、旧林道を歩いて椎矢峠に戻った。
- 椎矢峠から熊本県側へ少し出ると、広大な東内谷の向こうに天主山とこの日歩いた岩頭までの尾根が見渡せた。
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20180919_tenshuzan_001.jpg 民宿「おまえ」全景 朝、6時前 |
20180919_tenshuzan_002.jpg いい天気になりそうだ |
20180919_tenshuzan_003.jpg 椎葉林道、門割林道分岐地点 左折約8km、国見岳山池登山口 その先約2km、長谷登山口 この入口にゲート、通常進入禁止 |
20180919_tenshuzan_004.jpg 林道分岐から椎矢峠へ 整備され、春に比べ走りやすい |
20180919_tenshuzan_005.jpg 椎矢峠にて 熊本県側内大臣林道も整備されていた ただし、一般車が通行できるか否か不明 |
20180919_tenshuzan_006.jpg ゆっくり登山準備 |
20180919_tenshuzan_007.jpg それを見守るアザミの花 |
20180919_tenshuzan_008.jpg 登山スタート 旧林道を歩く |
20180919_tenshuzan_009.jpg 10分で、三方山南登山口分岐 右、三方山へ向かう |
20180919_tenshuzan_010.jpg なだらかな登りの登山道 尾根筋の道、快適に歩く |
20180919_tenshuzan_011.jpg 倒木に色鮮やかなキノコ 秋の深まりを感じる |
20180919_tenshuzan_012.jpg 大小ジグザクの道を登る |
20180919_tenshuzan_013.jpg コケ玉 かわいい!、とのこと |
20180919_tenshuzan_014.jpg 登山道分岐右折の先 「人吉・かめさん」、お久しぶりです |
20180919_tenshuzan_015.jpg かなりの急登 今回も「5分」では無理 |
20180919_tenshuzan_016.jpg 分岐から10分 三方山山頂到着 |
20180919_tenshuzan_017.jpg 南西の眺望 彼方中央、脊梁の盟主国見岳 |
20180919_tenshuzan_018.jpg 下山、上ってきた道を下る |
20180919_tenshuzan_019.jpg 分岐を右折 小さな尾根を快適に下る |
20180919_tenshuzan_020.jpg 三方山北登山口 旧林道出合三叉路を右折 |
20180919_tenshuzan_021.jpg 旧林道を北へ向かって進む |
20180919_tenshuzan_022.jpg 道の両側の深い谷 木々が美しい |
20180919_tenshuzan_023.jpg 休憩を取った切剥分岐に咲く アケボノソウ バンザイする5人の宇宙人の子ども? |
20180919_tenshuzan_024.jpg 切剥分岐を左折、軽い下り 旧林道は荒れている |
20180919_tenshuzan_025.jpg 赤い木の実が鮮烈 |
20180919_tenshuzan_026.jpg 大きなドリーネ |
20180919_tenshuzan_027.jpg ツルリンドウの実 ルビーのように美しい |
20180919_tenshuzan_028.jpg 早くもトリカブト出現 |
20180919_tenshuzan_029.jpg 旧林道終点の先、トラバースの道 石灰岩の岩壁基部を上る |
20180919_tenshuzan_030.jpg 尾根に向かって斜めに急登 辺りにトリカブト群生 |
20180919_tenshuzan_031.jpg 尾根に出ると、前方に天主山を見る ここからトリカブト群落が続く |
20180919_tenshuzan_032.jpg 淡い紫のトリカブト |
20180919_tenshuzan_033.jpg 立ち枯れの目立つ群落 恐らく何か病気が原因か? |
20180919_tenshuzan_034.jpg 尾根筋を西へ進む |
20180919_tenshuzan_035.jpg 群生地の痛ましい姿 見るに忍びず |
20180919_tenshuzan_036.jpg ツチアケビの実 |
20180919_tenshuzan_037.jpg これは元気に咲いている |
20180919_tenshuzan_038.jpg 尾根から南の眺望 椎矢峠、高岳、国見岳 |
20180919_tenshuzan_039.jpg 尾根西端、石灰岩岩頭へ ここで昼食、今回はここまで |
【尾根西端石灰岩岩頭から椎矢峠まで】
20180919_tenshuzan_040.jpg 岩頭から引き返す |
20180919_tenshuzan_041.jpg いくらか生気ある群落 |
20180919_tenshuzan_042.jpg 脊梁の森 |
20180919_tenshuzan_043.jpg |
20180919_tenshuzan_044.jpg 日を浴びて輝くトリカブト |
20180919_tenshuzan_045.jpg トリカブトと森をゆっくり観賞 |
20180919_tenshuzan_046.jpg |
20180919_tenshuzan_047.jpg 素晴らしい森だ |
20180919_tenshuzan_048.jpg 森の中をゆっくり尾根へ |
20180919_tenshuzan_049.jpg もうすぐ尾根出合 |
20180919_tenshuzan_050.jpg 尾根を越え見つけた 淡いピンクのトリカブト |
20180919_tenshuzan_051.jpg トラバースの道脇 トリカブトの群落 |
20180919_tenshuzan_052.jpg 純白のトリカブト |
20180919_tenshuzan_053.jpg 石灰岩帯を下る 足もと注意 |
20180919_tenshuzan_054.jpg 白のトリカブト 残念ながら、ひどいピンぼけ |
20180919_tenshuzan_055.jpg 山腹斜面、トラバース 登山道を確認しながら進む |
20180919_tenshuzan_056.jpg この辺り、踏分明瞭 旧林道終点が近い |
20180919_tenshuzan_057.jpg 終点到着 一休みした |
20180919_tenshuzan_058.jpg 旧林道終点広場のトリカブト |
20180919_tenshuzan_059.jpg 樹間から見えた国見岳 堂々たる山容 |
20180919_tenshuzan_060.jpg 巨大な倒木の根元 |
20180919_tenshuzan_061.jpg 樹間から天主山を見る(中央) その右手、トラバースしたピーク |
20180919_tenshuzan_062.jpg 切剥分岐 休憩 |
20180919_tenshuzan_063.jpg 旧林道を戻る |
20180919_tenshuzan_064.jpg 三方山北登山口三叉路 直進し、旧林道を歩く |
20180919_tenshuzan_065.jpg 倒木とキノコ |
20180919_tenshuzan_066.jpg 崩壊箇所を通過 |
20180919_tenshuzan_067.jpg イノシシのヌタ場 |
20180919_tenshuzan_068.jpg 天南星の実 別名:マムシグサ |
20180919_tenshuzan_069.jpg 何個所か、道を塞ぐ倒木を越え 椎矢峠へ向かう |
20180919_tenshuzan_070.jpg 三方山南登山口通過 |
20180919_tenshuzan_071.jpg 上り始めの旧林道を戻る |
20180919_tenshuzan_072.jpg 椎矢峠到着 |
20180919_tenshuzan_073.jpg 再度、熊本県側へ行ってみる |
20180919_tenshuzan_074.jpg 深い東内谷の向こう、左に天主山 右手鞍部のすぐ右、尾根西端岩頭 さらに右の二つのピークはトラバース |
20180919_tenshuzan_075.jpg 民宿「おまえ」の色紙 田中陽希さんが寄ったらしい 今年2月、彼はこの山域を歩いた |