kenta Stained Glass

カピス貝ランプシェード

2012年6月修理

          目次

ao1.gif 「ステンドグラスあれこれ」のページへ戻る

ao4.gif トップページへ戻る


 はじめに
「装飾工房『瑞緒』」からカピス貝ランプシェード修理の相談を受けた。ある運送会社から持ち込まれた修理依頼とのこと。輸送途上で破損したらしいそのランプシェードを実際に見て、ガラスと貝殻という素材の違いはあるが、ピースカット、縁を金属フォイルで巻く、ハンダで組み立てる、という作業工程はほぼ同じであるから、何とか対処できると判断し、修復を引き受けることにした。

ao1.gifこのページのトップへ戻る



 破損箇所と取り外し

:各画像をクリックすれば大きな画像になります。各ブラウザの「戻る」ボタンでこのページへ。)
capiz_0001.jpg

修理前ランプシェード
シェードをベースに取り付けるスパイダーが破損している
capiz_0002.jpg

破損ピース:上部4ピース(@〜C)
capiz_0003.jpg

破損ピース:中部から下部(D〜G)
Gは作業過程でハンダの熱のため傷ついたので取り替え
capiz_0004.jpg

取り外し終了:上部4ピース(@〜C)
capiz_0005.jpg

取り外し終了:中部から下部(D〜G)
capiz_0006.jpg

取り外した残骸

ao1.gifこのページのトップへ戻る

 材料調達・準備
  • ハンダ作業の材料と手順はステンドグラスの場合と全く同じであり、材料と道具類はすべて整っているから心配ない。
  • 第一の問題はピース素材のカピス貝である。この貝を用いた製品は見たことがあったが、実はこの貝そのもののことは全然知らなかった。修理の相談を受けた時、最初は「カスピ貝」(「カスピ海」からの連想に違いない)と名称すら間違えてしまった。ということで、まずこの貝のことをインターネットを利用して勉強した。次いで、これまたインターネットで調達先を調べた。いろいろ当たったが、最終的に「有限会社白王教材社」のショッピング・ストアで購入した。この問題はこれで解決。
  • 第二は、ピースを巻く「金属枠」(テープ?、フレーム?)である。破損したピースを取り外し調べてみると、素材は明らかに真鍮(黄銅)、厚さは0.05〜0.1mm、幅はおよそ4mm。さてこの真鍮枠をどこで、どのようにして入手できるのか、調べてみたがどうしても分からない。自分で作るより他に方法がない。そこで、入手可能なできるだけ薄い(0.1mm)の真鍮平板を購入、4mm幅にカットして中央を折り曲げた「枠」を作った。カピス貝の多く獲れるフィリピンの「カピス貝製品」加工場の画像を見ると、真鍮枠が沢山準備されている。どこかで大量生産されているはずであるが、分からない。また、真鍮平板はノリ(粘着材)付きとなしとがある。今回は「なし」の方を用いたが、これだと枠をピースに巻く作業は難しく、時間がかかる。これではいくら人件費の安いフィリピンでも商売にはならないであろう。多分厚さ0.1m以下・ノリ(粘着材)付きの枠を用いているのではないだろうか。今後この貝を素材として作品を作る場合、以上のことを確認する必要がある。
  • スパイダーが4本では強度が心配である。また不安定でシェードが揺れやすい。そこで、これを6本にすることにした。プラス2本は径2mm真鍮パイプ(丸棒よりも作業がしやすい)を用いた。また、裾外縁を真鍮線で補強してあるので、同じ大きさの線径#20を取り付けた(この線では強度に不安が残るのだが、他に合わせた)。

:各画像をクリックすれば大きな画像になります。各ブラウザの「戻る」ボタンでこのページへ。)

capiz_0007.jpg

木製ランプベース
capiz_0008.jpg

左から:真鍮線#20、真鍮パイプ径2mm
真鍮枠、カピス貝
capiz_0010.jpg

カピス貝拡大

ao1.gifこのページのトップへ戻る

 修理作業工程
  • ピースの作り方はステンドグラスの時と同じ。@各ピースの型紙を取り、Aそれを素材のカピス貝に当てて書き写し、Bダイヤモンドカットソーで切断し、Cルーターで調整し、Dさらにダイヤモンドヤスリで微調整する。
  • 次に、できあがったピースに真鍮枠をはめる。上で触れたように枠をはめること自体が大変難しい。その上、真鍮枠を巻いて破損箇所に当ててみると微妙に食い違うところがあるので、枠を外してまた微調整しなければならない。素材がガラスの時は、ごく薄い粘着材付き銅箔テープ(様々な幅が準備されている)を巻くので、その後のピースの調整は余程のことがない限り不要である。
  • ハンダ付けはステンドグラスに比べて極めて簡単、容易。裏側面のみでいいし、ハンダの盛りもなし。ただ、コテやハンダの熱が素材のカピス貝を痛め、その箇所が不透光になるので、素早く、確実に作業しなければならない。今回、ピースGを取り替えることになったのも、この作業の不手際のためであった。

:各画像をクリックすれば大きな画像になります。各ブラウザの「戻る」ボタンでこのページへ。)

capiz_0011.jpg

作業途中で
capiz_0012.jpg

ピース作成(一部)

ao1.gifこのページのトップへ戻る

 修理後

:各画像をクリックすれば大きな画像になります。各ブラウザの「戻る」ボタンでこのページへ。)
capiz_0013.jpg

修理後:上部ピース@〜C
capiz_0014.jpg

修理後:ピースD
capiz_0015.jpg

修理後:下部ピースE〜G
capiz_0016.jpg

スパイダー:2本加え補強、6本に
capiz_0017.jpg

修理完了
capiz_0018.jpg

修理完了:明かりを点けて

ao1.gifこのページのトップへ戻る

 「装飾工房『瑞緒』」による画像

当方の修理が終わり、引き渡した後、装飾工房『瑞緒』で修理箇所枠のさらなる処理がなされた。つまり、新しく取り付けた真鍮枠はぴかぴか光って他の枠とアンバランスであるため、古い枠と同じように見せる必要がある。そのため、硫黄を用いて輝きを押さえるという作業をしたわけである。

最初『瑞緒』に持ち込まれた直後の、破損状態を示す画像と、枠処理およびその処理後の画像が送られてきたので以下に掲げる。
:各画像をクリックすれば大きな画像になります。各ブラウザの「戻る」ボタンでこのページへ。)
  • 「装飾工房『瑞緒』」に持ち込まれた時のランプシェード
    1.jpg

    2.jpg

    4.jpg

  • 枠処理およびその処理後
    lampshuri01.jpg

    lampshuri02.jpg

    lampshuri03.jpg

    lampshuri04.jpg

    lampshuri05.jpg

    lampshuri06.jpg

  • 修理終了後、明かりを点けて、
    lampshuri07.jpg

    lampshuri08.jpg

    lampshuri10.jpg

ao1.gifこのページのトップへ戻る

ao1.gif 「ステンドグラスあれこれ」のページへ戻る

ao4.gif トップページへ戻る


Copyright © 2012 Kengo Tachibana
Created: June 28, 2012
Updated: July 06, 2012